真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第9章 嵐が来る。
「国親が諦めるのを見届けるまで、僕は千恵さんを見守り続ける。同じ事を何回も繰り返しても、無駄だから」
そしてタクシードライバーの男は、国親を立たせると部屋の外へと引きずっていく。
「恭介っ! 俺は、絶対お前を許さないからなっ!!」
叫ぶ声も、しばらくすれば聞こえなくなる。だが恨みを吐かれた恭介は中性的な顔立ちながらも精悍で、立派な男であった。
「……と、いう訳で。千恵さん、不快に思うでしょうが、もうしばらく僕と仲間に、あなたを見守らせてください。決して顔は合わせませんし、静かにしてますから」
すると千恵は、ベッドから下り、恭介に向き合う。千恵の表情もまた精悍で、守られるだけの女性ではないと伺えた。
「恭介……さんは、ただ一回鉢合わせただけのあたしに、そこまで言ってくれたんです。なら、あたしも、もう過去は忘れます。陰からと言わず、友達として付き合っていきましょう」
「千恵さん……」
思わぬ千恵の言葉に、恭介はまなじりを熱くする。差し出された右手を両手で握ると、大きく頷いた。
「――はい、よろしくお願いします!」