真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第9章 嵐が来る。
帰る準備が整うと、恭介は改めて千恵に問う。
「警察には……相談しますか? 僕達もついてはいますが、今回の事件はストーカーとして公的機関に報告してもおかしい事ではありません。千恵さんの気持ち次第、ですけれど」
「警察には、話さなくて大丈夫です。知らない人に根ほり葉ほり聞かれるのも嫌だし……」
千恵は、先程からずっとうつむいたままで静かな幸村を覗き見る。警察に話せば、間違いなく引っ越しを勧められるだろう。しかしそれを承諾してしまえば、もう二度と会えなくなる人がいるのだ。
「……そうですか。では、帰りましょう。車はこっちです」
国親が、この先大人しく諦めるかは分からない。しかし千恵には、奇妙な縁で結ばれた恭介という友がいる。もう、国親の影に怯える日は訪れないだろう。
家へ帰り、恭介が去ると、動き出したのは昌幸だった。
「幸村、お前は先に向こうへ戻りなさい。私は千恵と話がしたい」
「え? 拙者が、どうして……」
「いいから、戻りなさい」
凄みのある口調で迫られると、幸村は気迫に負けて頷く。しぶしぶ戻る姿を見送ると、昌幸はソファに腰掛け千恵と向き合った。