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真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~

第10章 「両腕を一生お貸ししてもいいわ。」と娘は言った。

 






 家族連れや恋人で賑わい、明るい声が絶えない夢のような場所、遊園地。ゴールデンウイークに来たばかりだというのに、千恵と幸村は今日も二人でそこに立っていた。

「本当に申し訳ない、千恵殿! 父上は、帰ったらこってりと絞るゆえ」

 幸村は楽しい遊園地の場にそぐわない、平謝りで千恵の隣を歩く。二人が見ているのは、遊園地の中にあるグッズのショップだった。

『遊園地のマスコット、リッチー君のぬいぐるみが欲しい』

 計画は日曜日、昌幸が突然我がままを言い出すところから始まっていた。自ら外に行くのは面倒だと誤魔化し、昌幸は幸村に遊園地への使い走りを申し付けたのだ。

 当然、幸村は昌幸を咎めた。幸村は真紀の店の手伝いがある。仮に遊園地へ向かったとしても、負担を掛けるのは千恵なのだ。だが、これは全て了承済みの計画。真紀も千恵も、幸村の憤りに反して頷いた。

 そして遊園地に一人で行くのは不自然だからと、幸村は千恵と共にまんまと遊園地へ向かう事となったのだ。

「まったく、どうしてあの人は大人しく隠居が出来ないのか……徳川が意地でも父上を潰したい気持ちが、少し分かる気がするでござる」
 

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