真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第10章 「両腕を一生お貸ししてもいいわ。」と娘は言った。
「そんなに怒らないで大丈夫だから……なんか、ごめんね」
「千恵殿が謝る必要はありません! しかし、リッチー君とやら、見つかりませんな。ここのマスコットは、クッキー君のようでござる」
幸村は棚に置かれたクッキー君ぬいぐるみを眺めながら、眉をひそめる。千恵も遊園地のマスコットには詳しくなかったため、首を傾げるしかなかった。
「リッチー君もクッキー君もマスコットなら、どちらでも同じに違いない。千恵殿、もうクッキー君でよいでごさろう?」
「まあ、もしかしたら名前を間違えて覚えてたかもしれないしね。クッキー君でもいいんじゃないかな」
そもそも本来の昌幸の目的は、ぬいぐるみではなく幸村を連れ出す事である。一応の大義名分さえ果たせばいいだろうと、千恵は幸村の提案に頷いた。
ぬいぐるみを購入し店を出るが、まだ日は高い。千恵は深呼吸すると、幸村に声を掛けた。
「幸村、せっかく来たんだし、その、まだ時間もあるし……せっかくだから、ちょっと回っていかない?」
「良いのですか? 千恵殿とて休日ですから、ゆっくりしたいのでは……いえ、拙者としては、非常にありがたい提案でござるが」