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真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~

第10章 「両腕を一生お貸ししてもいいわ。」と娘は言った。

 
「こんな風に千恵殿を独占できるのは、今だけですから。駄目ですか?」

 甘えた調子で言われると、千恵は首を横に振るしかなくなる。幸村は屈託のない笑みを浮かべると、ゴンドラの椅子に深くもたれかかった。

「遊園地とは不思議な施設ですな。父上や兄上と一緒だと、楽しさを感じると同時に心安らかになりましたが……千恵殿と二人だと、高揚してずっと鼓動が早いのです。施設自体は、何も変わりないはずなのですが」

「あたしも、今日はずっとドキドキしてる。緊張しすぎて、今も倒れそう」

 幸村の言動は、少なくとも千恵を嫌っているようには思えないものである。千恵は深呼吸すると、幸村と繋いでいない方の拳を握り、口を開いた。

「――ううん、今日だけじゃなくて、もうずっと前からドキドキしっぱなしなの。好きなんだ、って気付いた、その日から」

「……千恵殿、それは」

「好きだなんて、おかしいよね。住んでる時代も価値観も違うのに、上手く行くはずないってすごく悩んだ。けど、信之さんと話して気付いたの。問題を全部背負っても、苦しい事がたくさんあっても、それより一緒にいる方が幸せだって」
 

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