真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第10章 「両腕を一生お貸ししてもいいわ。」と娘は言った。
観覧車は夜景を楽しめと言わんばかりに上っていくが、幸村は景色に目もくれずに千恵と戯れる。千恵の背後から抱きすくめると、甘い言葉を囁きながら首筋に唇を落としていた。
「こうして千恵殿と触れ合える日がくるなど、夢のようです。出来るなら、このまま時が止まれば良いのに」
言いながら幸村の手が千恵の太ももに伸びると、ただ甘いだけではない空気が生まれる。千恵が僅かに身を強張らせると、幸村はさらに妖しく足を撫でた。
「ゆ、幸村」
「千恵殿は気が強そうに見えて、華奢で控え目ですな。細過ぎて、心配になります」
品定めでもするかのように撫でる手は、内股にするりと触れる。羞恥に赤くなる千恵を後ろから覗き混む幸村は、真田の血を感じさせる意地悪の影を見せていた。
「ここじゃ、駄目だよ……」
「分かっています。次に乗る人だっているでしょうし、こんな外から覗き放題のところで分別なく襲うほど馬鹿ではありません。しかし、せっかく想いが通じ合ったのですから、悪戯くらいは」
足に触れると同時に耳を食まれると、微弱だった反応が強くなる。千恵は幸村を咎めるように睨むが、目を潤ませていては逆効果だった。