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真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~

第10章 「両腕を一生お貸ししてもいいわ。」と娘は言った。

 
「うん……そうだろうね」

「最後に泣くのは、絶対に千恵なんだよ。なのにそんな幸せそうにして、間違ってる! 本当にそれが一番なのか、よく考えたの?」

 美穂の口調は厳しいが、それも千恵の身を案じた結果である。千恵は美穂が本音でぶつかってくれる事に感謝しながら、また自分も本音を吐露した。

「幸村を奪おうだなんて、思ってないよ。このまま進めば、泣くのがあたしだって事も分かってる。普通に考えたら、離れるのが一番だと思う」

「そこまで分かってるなら、なんであの人なの」

「最後にどうなっても、こうするのが一番あたしにとっては幸せだから。ごめん、自分がおかしな事言ってるのは分かってるんだ。呆れたなら……離れてくれても、構わないから」

 千恵の結論は、誰に罵倒されても文句の言えないものである。親友を失うのは身を裂くほど辛い事だが、千恵はそれも覚悟して答えを出したのだ。現実に、目を背けるつもりはなかった。

「――私は、反対だよ。千恵が泣きを見た後幸村に恨み言残すようなら、間違いなく軽蔑すると思う。けれど……泣きを見たら、慰めるのが友達ってもんでしょ」
 

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