真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第2章 千恵は激怒した。
「俺は千恵と話したいんだ、ちょっと黙ってくれないか」
「はあ? あんた自分が三ヶ月前何したか分かって言ってんの!? タマ叩き潰してぶっ飛ばす!」
美穂の剣幕は周りの視線を集め、あまり良くない注目を浴びる。しかも端から見れば、これは美穂と国親の痴話喧嘩である。このままでは、下世話な噂が流れるのは美穂の方であった。
「待って! 美穂……大丈夫だから! あたしがきちんと決着着けるから!」
自分の揉め事で、親友の名誉を傷つけてはならない。千恵は慌てて美穂を宥めるが、美穂は簡単に引き下がらなかった。
「いいや、別れた男がストーカーになって、相手を刺殺とか絶対そのタイプだもん! 二人になっちゃ駄目!」
「考えすぎだよ……大体、捨てられたのはあたしなんだし」
別れたのが千恵からであるなら、美穂の心配ももっともだ。しかし、恋人としての興味を失ったのは国親の方である。それで狂気を起こすとは考えにくい。とはいえ、今更国親が顔を出した理由も、千恵には検討がつかないが。
自虐的な説得に、千恵はしょげてしまう。美穂はそれに気付くと、ようやく手を離した。