真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第11章 拙者は幸村である。職はまだない。
「――千恵? ちょっと、聞いているでござるか!?」
口を大きく開いたまま固まる千恵に、幸村はひとまずクローゼットを越える。そこで幸村は部屋が変わっている事に気付き、ぐるりと見回した。
「引っ越したのですか? 前より広いですな」
「……言わなきゃいけないのはそんな事じゃないでしょ!! なんで幸村、ここにいるのよ!?」
「え? いや、大坂城が落城したので、ひとまず秀頼様を保護しなければと思い、薩摩は島津殿の元へと向かったのです」
「そういう事じゃなくて! なんで、どうして生きてるの……!? 幸村は大坂の陣で死んだって、歴史ではそうなってるのに」
幸村が生きている。それは喜ばしい事だが、今は動揺の方が強かった。幸村は千恵の背を撫で、宥めながら口を開いた。
「歴史では、そのように伝えられていたのですか。不安にさせましたね、申し訳ない」
「本当に……心配したんだから」
「拙者はもとより死ぬ気はなかったのですが……万が一という事もあります。それを考えると、待ってほしいとは言えなかったのです」
「またそうやって余計な気を遣って! 言わない方が、かえって待っちゃうわよ、バカ!!」