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真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~

第11章 拙者は幸村である。職はまだない。

 
 千恵は幸村の胸を叩き、衝動のまま暴言を吐く。が、幸村が申し訳なさそうにうなだれると、縋るように抱きついた。

「もう……会えないと思った」

「本当に、申し訳ありません……」

 幸村も千恵の腰に手を回し、一年振りに触れる愛しい人の体温に浸る。しばらく二人はそうしていたが、やがて千恵が顔を上げた。

「でも、本当にどうして生きてるの? 徳川家康に特攻したんじゃないの?」

「それは、影武者です。どんな手を使っても生きなければと思っていたので、申し訳ないですが影武者に徳川方を引きつけてもらったのです」

「でも、怪我してる」

「怪我の一つや二つは仕方ありません。命に比べたら、このくらい」

 幸村は額の傷に触りながら、苦笑いを浮かべる。そして床に正座すると、千恵を見上げた。

「拙者、豊臣の将として為すべき忠義は果たしました。秀頼様の時代を取り戻す事は敵いませんでしたが、それは世の定めなのでしょう。真田源次郎信繁としての人生は、幕を閉じました」

「本当に、終わりなの? 秀頼様って、確か豊臣秀吉の息子だよね。その人が生きているなら、また立ち上がるかもしれないじゃない」
 

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