真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第2章 千恵は激怒した。
千恵は思い切り皮肉を返すが、同時に『あいつ』への同情も覚える。千恵はてっきり二人が結ばれたものだと思っていたが、向こうだって天秤に掛けられていたのは間違いなかったのだ。
そんな男を信じられないと振るのも、よくよく考えれば当たり前である。髪を切らなければ未練を断ち切れなかった千恵の方が、愚かな女であった。
「俺にとって必要だったのは千恵だったんだって、すぐに気付いた」
「じゃあ三ヶ月も放っておかないで、すぐに謝ったら良かったんじゃないの?」
「その方が良かった? あれだけの事をしたんだし、ちょっと間を置いた方がいいかなと思ったんだけど」
「……ううん、間を置いてもらってよかった」
「じゃあ、やり直して――」
顔を上げた千恵は、国親に対し怒りの目線しか向けていない。国親も流石に言葉が出なくなり、口をつぐんでしまった。
「すぐ謝られてたら、あたし馬鹿だから許してた。冷静になるだけの時間をくれてありがとう、国親」
千恵はカバンから財布を取り出し、いつものメニュー代二千円をテーブルに叩きつけて立ち上がる。
「復縁とか、もう有り得ないから。二度とあたしの前に顔を見せないで」