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真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~

第2章 千恵は激怒した。

 
 千恵はそのままレストランを出て、帰路へと着く。身勝手な主張に腹が立つばかりで、涙すら出ないのは幸いであった。

 今日はっきりしたのは、千恵の心には無碍にされた傷こそ残っているものの、国親に対する愛情は欠片も残っていない事。その事実は、自分が前に進めている証拠である。それだけが、千恵にとって救いであった。







 心持ち足音が荒いまま、千恵はマンションの中を進んでいく。と、そこで自分の部屋の前に人影があるのに気付いた。

「幸村……?」

 ドアにもたれかかり、待っていた和服の小柄な男は間違いなく幸村である。千恵が慌てて駆け寄ると、幸村は人懐こい笑みを浮かべた。

「今日は遅かったのでごさるな。おかえり、千恵殿」

「た、ただいま」

 千恵は幸村や昌幸に、くれぐれも外には出ないように言いつけている。部屋の中だけならまだしも、現代の社会はあまりにも仕組みが違いすぎて混乱するのは必至であるからだ。そもそも部屋はオートロックなので、鍵を持たない幸村が外に出れば、中に入る手段がなくなってしまう。

 幸村達も、それを承知し外へ出ようとはしなかった。ドア一枚とはいえ、外に出たのは異例なのだ。
 

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