真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第2章 千恵は激怒した。
「どうして、わざわざ外で待ってたの?」
「それは……中で待っていたら、父上に知られてしまう故に。千恵殿、どうしても話しておきたい事があるのです」
「そういえば、今朝もそんな事言ってたけど……昌幸さんがいると、話せないの?」
幸村が素直に頷くと、千恵に疑問が浮かぶ。仲の良い父子であるというのに、聞かれては困る話とはなんなのか。よほどの事情であるのは確かだが、それが何なのかは検討がつかなかった。
「千恵殿、実は――」
幸村が深呼吸し、ようやく打ち明けたその時。二人を遮るように、鋭い声が飛んできた。
「千恵、その男がいるから、やり直せないの?」
それは紛れもなく、先程レストランに置き去りにしたはずの国親。国親は千恵の肩を掴むと、今日初めて厳しい表情を浮かべた。
「確かに、すぐ謝ってればよかったな。こういう変なのが沸く事なんて、考えたらすぐ分かるのに」
「なんでここにいるの……まさか、尾けてきたとか? あたし、あんたに家を教えた覚えなんてないけど」
「だって、千恵がさっさと帰るから。千恵は言いたい事言って満足かもしれないけど、俺の話は終わってないよ」