真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第2章 千恵は激怒した。
すると幸村は国親の手を千恵から引き剥がし、千恵を背に隠す。
「何者かは知らぬが、嫌がる女人に手荒な真似を働くなど言語道断。今は拙者が話をしているのです、お引き取りを」
「……随分変わったしゃべり方するね。確かに変なのが沸くとは言ったけど、ここまで個性的なのが沸いてるなんて意外すぎ」
「訳の分からぬ事を……とにかく、千恵殿がお前を歓迎していないのは明らか! 自分の家へ帰るがよい!」
幸村は国親を押し出し、千恵の部屋から離していく。国親は大柄であるが、一角の武士である幸村に力では敵わない。小さく舌打ちすると、千恵に手を振った。
「また来るよ、今度は面倒なのがいない時に」
国親が立ち去ると、幸村はぶつぶつ呟きながら戻ってくる。そして千恵の顔色を窺うと、部屋のドアを軽く叩いた。
「こんな時は、飲んで寝るに限るでござる」
「え……でも幸村、話は?」
「そのように沈んだ顔をした千恵殿に、不躾に話など出来ぬよ」
幸村も相当思い詰めた話だろうに、彼はあくまで千恵を気遣う。その優しさはもやだらけの心に、そよ風を吹かせた。
「ありがとう、幸村」