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真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~

第3章 あなたにこの生活を教えよう。

 
 幸村はすぐに掛け寄ると、村人を縁側に座らせ自分も隣に座る。すっかり村人と親しくなった幸村を見つめながら、昌幸は一人思案していた。

(やはり、あの馬鹿をここに通して正解だったな。捜索を人任せにするばかりで、この広間は何一つ調べなかった)

 この広間に掛けられた掛け軸の裏には、平成に繋がる穴がある。そして見つかると困る物は、全てその向こうに隠していたのだ。

 幸村は、村人との話に夢中で昌幸には目もくれていない。悪戯めいた笑みを浮かべると、昌幸はこっそり掛け軸から穴の中に入っていった。

 向こう側の平成は、日曜日である。といっても、独り身の千恵に連れ立つ相手はいない。特に深い意図もなくパソコンでニュースをチェックしているうちに、昼間から眠気に襲われていた。うとうとしていたため、クローゼットが開く音に気付かなかったのだ。

「千恵」

「ひゃああぁっ!?」

 背後から椅子ごと抱きすくめられ、ようやく千恵は訪問者の存在に気付く。思わず叫んでしまった千恵の口に人差し指を当て、昌幸は後ろから千恵の顔を覗き込んだ。

「あまり大きな声を出すと、向こうの幸村に気付かれる。今日は、私に抜け駆けさせてくれ」
 

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