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真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~

第1章 クローゼットの向こうは戦国時代でした。

 
 幸村がさらに言葉を続けようとしたその時、二人のいたリビングのドアが勢い良く開く。体から湯気を纏い、コーヒー牛乳を片手に部屋に入ってきたのは、幸村の父『真田昌幸』であった。

「いやぁ、平成の風呂は実に快適だ。実に良き湯だったぞ、千恵」

 昌幸は自称55歳だが、とても見た目からは想像出来ない若々しい外見である。バスタオルを腰に纏うだけで露わになったのは、武士らしく傷だらけで、しかし均整の取れた体。コーヒー牛乳をこれほどにないほど自信あり気に飲み干す顔は、幸村と血縁を感じさせる男前である。

 昌幸は千恵の実父ともさほど年は変わらないが、露わな姿で現れれば千恵も狼狽えてしまう。それを瞬時に悟った昌幸は、幸村との間に割って入り、千恵の顎を取り妖しい笑みを浮かべた。

「出来るなら、千恵と二人でしっぽりと入りたかったのだが。今からでも、二人で裸の付き合いを――」

「父上! 嫁入り前の娘に、そのような冗談はお控えくだされ!」

 幸村が昌幸を引き剥がし叱りつけても、昌幸は全く気にせず肩をすくめる。幸村が投げてよこした着物を雑に着ながら、大人気なく口を尖らせた。
 

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