真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第1章 クローゼットの向こうは戦国時代でした。
「まったく、幸村は固くて困るなぁ? 千恵」
結局着物も緩く着付け、昌幸は肌を晒しながら、幸村の投げたコントローラーを拾ってソファに座る。
「よし、今度は私が相手をしよう。私が負けたら、千恵の願いをなんでも叶えてやる。ただし負ければ、今夜共に閨で過ごすのはどうだ?」
「えっ……?」
「父上!」
あまりにストレートな誘いに千恵が頬を真っ赤に染めると、幸村は千恵のコントローラーを奪い昌幸の隣に座る。
「全く、蟄居中のご隠居が、どうやって願いを叶えるおつもりですか。千恵殿に手を付けるなら、まずはこの幸村を破ってからにしていただきたい」
「ふふ……いいだろう。子は父の屍を踏み潰し昇るもの、お前の本気、見せてみろ!」
仰々しい言葉ではあるが、やっているのは格闘ゲームである。肩を並べ、表情をくるくる変えながら遊ぶ父子の仲に、千恵は思わず笑みを零した。
「ホント、仲がいいんだから」
千恵の呟きも耳に入らず、二人は熱戦を繰り広げる。その姿は千恵と何一つ変わらぬ人間そのもので、彼らが真田幸村と真田昌幸――遠い戦国の世から時を越え、現れた人物だとは思えなかった。