真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第3章 あなたにこの生活を教えよう。
「私達も本などで平成の知識は取り入れているが、実物を見るのは全て初めてだからな。いや実に楽しみだ」
幸村を頼む、と言った割に昌幸も外に付いて来る気のようで、下駄を抱えながら笑んでいる。とはいえ千恵は、昌幸を置いていく程薄情ではない。着物に下駄、といった多少目の引く二人を引き連れ、マンションのドアを開いた。
エレベーターの存在に感慨深く話す二人を引き連れ外に出れば、外は春の陽気が穏やかで過ごしやすい空気に包まれている。城でもない限り高い建物などない時代に比べると、平成の世は景色が人間を圧迫する。しかしその重圧も、今の幸村達にとっては興奮であった。
「本で見た通り、大きくて高いですな……」
「車というものは存外うるさいものだな。あちらこちらが音がして、騒がしい。人が賑わっている証拠だ」
「道路もここまで整備すると、歩む人にとっては快適でしょうな。昔、織田信長公が歩道の整備に力を入れたと聞きましたが、やはり大事だったのでしょう」
「しかしこの固い地面、馬で駆けるには向かないな。これでは足をやられてしまう。馬に変わる乗り物を得た世だからこその発展だ」