真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第3章 あなたにこの生活を教えよう。
二人ははしゃいではいるが、どこか観点が違う。千恵はしばらく二人の様子を眺めながら、二人が国の統治者だったのだと改めて感じていた。
(それにしても……やっぱり着物は目立つなぁ。すれ違う人が、皆見てるよ。まあ、着物だけが原因じゃないだろうけど)
和服は確かに目を引くが、日本の物なのだから有り得ない格好ではない。すれ違う男性などは、ちらりと眺めてすぐに自分の日常に戻っていた。だが女性は、目を引いたその人の顔を見ると浮かれたような表情で二度見する。
(イケメンって、すごい)
並んで歩くのに少しためらいを覚えたその時、幸村が不意に千恵の顔を覗き込んだ。
「千恵殿?」
「え? あ……な、なに?」
「あまり顔色が優れぬようですが、やはりご迷惑だっただろうか。気分が乗らないのであれば、今日は」
「い、いや違うの! なんかすごいなーって考えてただけ」
「すごいとは、何が?」
幸村は首を傾げるが、まさか幸村がイケメンですごいとは言いにくい。千恵が返事に困ると、昌幸が間に割って入って千恵の手を取った。
「それは、異なる時代の邂逅が、だろう。私もすごいと思うぞ? こんな体験、他の誰も出来まい」