真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第3章 あなたにこの生活を教えよう。
車の中にいる女主人の腕を掴み、下品な笑みを浮かべる男。そして連れらしきもう一人の男は、車の横にある看板を蹴り飛ばした。
「無法者、成敗いたす!」
「えっ……幸村!?」
昌幸に気を取られていた千恵は、移動販売車にも、柄の悪い客にも気が付いていなかった。突然幸村が走り出しても、止める事は出来ずうろたえる。幸村は男達に手を伸ばし首根を掴むと、二人まとめて後ろへ引き倒し尻餅をつかせた。
「か弱き女人に対し無体とは、日本の男子として恥だと思わぬのか!」
「な、なんだぁコイツ!」
「手ぇ離せよ、チビ!」
柄の悪い男達は立ち上がり幸村に絡もうとするが、幸村が片手にも関わらず押さえられると動けない。額に汗を浮かばせ、舌打ちして叫んだ。
「っんだよ、離せよ!」
「人に迷惑を掛けず正しく生きるというなら、離してやる」
「うぜぇ……分かったよ、誓う誓う! だから離せ!」
投げやりな口調だが、幸村はそれを聞くとすぐに手を離す。男達は憎らしげに幸村を睨みながらも、すごすごと立ち去っていった。
「軟弱な奴らだ、未来も良い事だけではないようだな」