真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第3章 あなたにこの生活を教えよう。
女性は幸村の目を見つめ、しばらく黙る。自分で美人と言うだけあって、その大きな目は異性を惹きつける力がある。だが幸村の瞳に、下心はまったくなかった。
「……へぇ、珍しい。新手のナンパじゃないんだ」
すると女性は車から降りると、今度は幸村を遠慮なく隅から隅まで、頭のてっぺんから足先まで眺めた。そんな事をしていると千恵と昌幸が追いつき、慌てて幸村に駆け寄った。
「幸村、勝手に行っちゃ駄目だってば……どうしたのよ、突然」
「千恵殿。いや、この屋台の女主人が悪漢に襲われているのに気が付いたら、体が勝手に……置いていって、申し訳なかった」
「悪漢……?」
千恵が首を傾げると、店員の女が千恵と昌幸に頭を下げる。そして万人に好印象を与える笑みで、二人にも握手を求めた。
「あたし、広瀬真紀っていいます。この方が、あたしの店をチンピラから守ってくれたんですよ。ありがとうございます」
千恵が車に視線を移すと、「アミーゴ・メヒコ」という文字。メニュー表を見ると、この車はメキシコ料理の屋台のようだった。
「なるほど、流石は我が息子。美人を見つける才には長けているな」