真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第3章 あなたにこの生活を教えよう。
「べ、別に真紀殿が美人だから助けた訳ではない! 助けた女人が、たまたま美人だったのでござる」
「そんなに美人って言われると照れるなぁ。そういえば名前聞いてなかったね、あなた、名前は?」
真紀は小首を傾げ、下から幸村を覗き込んで訊ねる。
「拙者は真田信し……いえ、真田幸村でごさる。こちらは父の昌幸と、お世話になっている梅宮千恵殿。よろしくでござる」
「お世話に……なんか色々事情があるんだね。面白い」
仰々しい幸村の話し方は、真紀の頭に様々な憶測を浮かばせた。そして沸いてくるのは、不思議な一同への興味。
「幸村、お言葉に甘えて、片付け手伝ってもらってもいい? 時間に余裕があれば、だけど」
「それはもちろん!」
真紀の申し出に二つ返事で答えると、幸村は千恵に詳しい事情と手伝いの許可を伺う。が、現代の風習はまだ本やゲームの知識でしかない幸村。千恵はすぐに返事が出来ず、渋い顔で唸る。
「うーん……」
「幸村、私が休みたいと言っているのに、ここで待たせる気か? 老いた父親相手に殺生な」
すると昌幸が、あからさまな泣き真似をして幸村を咎めた。