真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第4章 幸村は町の移動販売車でタコスを焼く係りでした。
「それは……理屈じゃないよ。好きになったら、しょうがないじゃない?」
「まあ、それは確かに……」
「たまたまメキシコ料理と触れ合う機会があって、それで惚れただけ。運命だったんだよ、きっと」
すると真紀は幸村の頬に手を伸ばし、身を寄せ、素早く唇を奪う。両手が塞がった上に不意打ちのキスに、幸村は固まり反応出来なかった。
「なっ……ま、真紀殿!?」
「幸村と出会ったのも、運命だね。幸村がよければ、今日……どう?」
真紀の視線は、今まで見せていた気持ちのいい女主人と違って夜の気配を醸し出している。黄昏時に誘う魔性の手に、幸村はつい息を飲んでしまう。
「い、いけませんぞ! 女人がそのような誘い、はしたない!」
「幸村はいかにも大和撫子がタイプそうだよね。でも知ってる? メキシコの女は、日本人よりずっと積極的なんだから」
「真紀殿は日本人でござる!」
首を勢い良く横に振る幸村に、真紀は頬を膨らませ睨み付ける。
「もう、つまんないの。いいじゃない、減るもんじゃあるまいし……あ、男の人は減るわね」
「真紀殿!」