真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第4章 幸村は町の移動販売車でタコスを焼く係りでした。
「分かってる、今日は何もしないんでしょ? でも幸村、その気になったら、いつでもいいからね?」
真紀は笑顔で幸村から離れると、今度は先を歩き幸村に手招きする。
「公園でお父さんとか待ってるんでしょ? 長い間拘束しちゃったし、挨拶もしたいから一緒に行こ、幸村」
気持ちの切り替えが早いのか、真紀はもう色気を隠し陽気な女主人に戻っている。あまり道を知らない幸村にとって真紀の案内は無視できず、頷くしかなかった。
公園はすぐそこであり、ベンチに座る昌幸達は簡単に見つかる。しかし幸村は待っている二人の姿を見たその時、胸が締め付けられるように苦しくなってしまった。
「千恵殿……」
ベンチに座り、どこに忍ばせていたのか本を読んでいる昌幸。その昌幸の肩に身を寄せ、千恵は無防備に寝ていた。まるで、恋人同士のように。
「幸村、遅かったな……その食欲をそそる香りがする袋は?」
昌幸は幸村と真紀に気付くと、本を閉じ顔を上げる。だが幸村は昌幸の問いに答えず、昌幸の膝の上に紙袋と封筒を置くと千恵の両肩を掴んで揺さぶった。
「千恵殿、起きるでござる!」