真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第4章 幸村は町の移動販売車でタコスを焼く係りでした。
「ん……幸村……? あれ、あたし寝てた……?」
千恵が目を覚ますと、幸村は千恵の手を引き無理やり立たせる。そして寝ぼけ眼の千恵を引きずり、奥の方へと歩いていく。
「え? ちょっと……何?」
「おい幸村、どこに行くつもりだ」
「父上は黙って待っていてください! 拙者は千恵殿と話がしたいのです!」
幸村は一度立ち止まると、昌幸を指差し真紀に訴えた。
「真紀殿、そこの父上はどうせ尾けてくるに決まっていますから、見張っていてくだされ!」
「はぁ……いってらっしゃい」
足音荒く去っていく幸村に戸惑いながら、真紀は手を振り見送る。
そして幸村は高台の方まで進むと、立ち止まり辺りを確認する。昌幸どころか人っ子一人いないそこからは、沈む夕日がよく見えた。
「幸村……どうしたの、急に?」
「いい加減話をしないといけないと思って……つい。強引に連れてきてしまった事は、謝るでござる」
「いや、それはいいんだけど、話って? そういえば少し前からずっと言ってたのに、結局聞けてなかったね。あたしも時間取れば良かった」