真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第4章 幸村は町の移動販売車でタコスを焼く係りでした。
幸村は千恵の言葉に、ますます胸を締め付けられる。幸村が勝手に話をしたいだけで、千恵が気を遣う必要などないのだ。それでも謝る姿を見ていると、幸村は無意識に千恵に手を伸ばしていた。
幸村の手が千恵の肩を押さえると、千恵は僅かに頬を赤く染める。
「幸村……話って?」
「千恵殿……」
見つめる幸村は、今までになく真剣な眼差しをしていた。
「……父上には、気を付けてくだされ」
「――え?」
だが幸村の口から出てきたのは、千恵が胸を騒がせていたような浮かれた内容ではない。千恵が目を丸くしていると、幸村はさらにまくし立てた。
「息子の拙者が言うのもおかしな話ですが、父上は感情と利益を完全に切り離し、非情を貫ける策士です。千恵殿に甘い顔をする裏では、未来の技術を盗み優位になるよう働いているに違いありません」
「つまり、あたしを利用してる、って事?」
「千恵殿に悪意を抱いている、とは言いません。間違いなく感謝はしているでしょう、しかしそれと利を得るのは、父上にとっては全くの別問題なのです」
幸村は小さな溜め息を吐くと、伏し目になり呟く。