真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第4章 幸村は町の移動販売車でタコスを焼く係りでした。
兄・信之の仕送りがなければ生活もままならないはずなのに、信繁は痩せこけるどころか肌の色艶が以前より増している。屋敷ではないどこかで、充実しているのは明らかだった。
「いずれ徳川に対抗するつもりならば、わたくしも一層倹約に励みます。臣従し許しを乞うと言うのなら、徳川の愛妾に落とされても構いません」
「そのような事、出来るか! 義父上に申し訳が立たん」
「申し訳が立たないと思うのなら、信繁様の真意を明らかにしてください。今はまだ、ごく一部の人間が首を傾げている程度です。しかし抜け出す機会が増えれば増える程、意図の見えない行動に疑心を抱くでしょう。そしてそれは、真田に不幸を呼びます」
武家の妻として、彼女は分別を弁えている。信繁はその気丈さと聡明さに感心しながらも、胸の奥に焦りを覚えていた。
信繁の真意。それが、信繁自身にも分からなかったのだ。
(拙者は……あの地で、何をする? 暇を紛らせ、この現実から逃避するだけなのか? 何のために……生きている?)
心に問い掛けても、答えはない。信繁を信じついて行くと覚悟している竹林院の方が、よほど真っ直ぐな目をしていた。