真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第4章 幸村は町の移動販売車でタコスを焼く係りでした。
「……お竹が心配するような事は、何もしていない。今のところは、幕府に逆らうつもりも、媚びる気もない。父上が本多正信殿と赦免の交渉を行っているそうだから、ひとまずはその結果を待ってくれ」
信繁は目をそらしたまま、竹林院の細腕を引き寄せ布団に引き入れる。突然向けられた男の本能に彼女が小さな驚きの声を上げると、眩しくてとても合わせられなかった視線が和らいだ気がした。
「信繁様……」
「夜中に妻が夫の閨に忍び込んで、何もせず戻るつもりか?」
竹林院は逆らいこそしないものの、表情は暗い。曖昧なままの答えを吹き飛ばすように、信繁は彼女をきつく掻き抱いた。
触れる体は、ひもじい生活のせいか以前より痩せてしまっている。信繁は彼女の寝巻きを剥がしながら、ふと平成の世を思い出した。
(あちらから食べ物を調達すれば、お竹も肥えるだろうか)
信繁は、現在平成の世をひた隠しにしている。目ざとく見つけられてしまったが、初めは昌幸にも隠していたのだ。しかし向こうから何か持ちこむとなれば、平成の存在を皆に知らせなくては混乱を呼ぶだろう。向こうの存在を、伝えない訳にはいかない。