真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第4章 幸村は町の移動販売車でタコスを焼く係りでした。
妻の身を案じるなら、それをためらう必要はない。千恵ならたとえもう一人来訪者が増えても、許してくれるに違いない。信繁は、千恵をそんな人間だと思っていた。
「……」
だが、信繁の口は動かない。肌が露わになった妻を前にして、心を占めるのは興奮でなかった。
(千恵殿が、お竹と会ったら……)
千恵の名前を挙げて、ふと思い浮かんだのは先日、下着姿の千恵と対峙した時の記憶。今竹林院を組み敷いているのと同じような体勢になってしまった事故がよぎる。
無防備で雑なようでいて、女らしく細い体。遠い未来の甘い香りを思い出すと、理性が眩む。
「信繁さ――あっ」
信繁が抱いているのは、あくまで長い間寄り添った正室である。しかし信繁は目を閉じ、暗闇に妄想を抱いていた。
「思い悩んでおられるのですね、信繁様。わたくしは……それでも、構いません」
不安定な心を許してくれる妻の愛に甘え、信繁は追及から逃げる。しかし体を重ねて誤魔化しても解決にはならないと、竹林院は悟っていた。
(これは……少し助けが必要かもしれません)