真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第4章 幸村は町の移動販売車でタコスを焼く係りでした。
「千恵が部屋汚くしてるなんて、珍しい。そういうとこは意外にうるさいくせに」
「それは……そんな時もあるよ。色々あるからね、色々」
「ふーん……ま、いいや。じゃあ私一度家に帰って荷物持ってきたりお酒調達してくるからさ、その間に片付けてて」
美穂はさして深く追及せず、千恵の肩を叩き結論づける。千恵は安堵の溜め息を吐くと、足早に帰路へ着いた。
が、そんな日に限って運命は張り切りハプニングを起こす。信号待ちをしていたその時、後ろから誰かに突然抱き締められたのだ。
「会いたかった、あたしの女神!」
「きゃあぁ!」
振り向けば、そこにいたのは屋台の女主人、真紀。真紀は目を丸くする千恵に向かい合うと手を取り、頭を下げた。
「お願い、あたしに幸村を貸して!」
「……はい?」
信号が青に変わり、皆ぞろぞろと進み始める。しかし千恵は渡れず、真紀によって強引に人気のない路地へ連れて行かれた。
「あのさ、この前幸村に手伝ってもらったでしょ? それが広まっちゃってさ、イケメンはどこ? って聞かれるようになっちゃったのよ」
「は、はあ……」