真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第4章 幸村は町の移動販売車でタコスを焼く係りでした。
そして家に着くと、いつものように平成の世でたむろしていた二人に事情を話し、帰宅させる。幸村には真紀との邂逅も知らせ、考えておくように伝えた。
(あたしが一人で考えても、幸村がどうするか分かんなきゃ意味ないもんね。ひとまずは、幸村の気持ちを確認しないと)
そう結論付けた千恵は、幸村達が散らかした部屋を軽く片づける。戦国に続くクローゼットは隠しようがないが、美穂は人の家のクローゼットを勝手に開けるような人間ではない。千恵が余計な事さえ言わなければ、見つかるとは思えなかった。
準備は万端、と頷いたその時、玄関のチャイムが鳴る。千恵がドアを開くと、そこには訝しげな顔をした美穂がいた。
「どうしたの、そのしかめっ面?」
「いや……ひとまず、中入らせて」
美穂は中に入ると、買ってきた酒やつまみの入った袋をリビングのテーブルに置く。そして中を見渡し、長い溜め息を吐いた。
「千恵……お金持ち! 何よ部屋広いじゃない!」
「広いって言っても、家賃は安いから。お金持ちじゃないよ」
「謙遜はよしなさいよー、千恵は出来る子だって、この前課長が褒めてたわよ? 出世コース、うなぎのぼりでしょ」