真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第4章 幸村は町の移動販売車でタコスを焼く係りでした。
「その返事、心配だなぁ……女の子なんだから、警戒は人一倍しないと駄目だよ?」
「分かってるってば。それよりほら、飲も」
説教される前に千恵はビールを飲み干し、つまみを頬張る。
「もー……早く良い人見つけて、私を安心させなさいよね!」
「そんな事言って、美穂だって彼氏いないじゃない。前に話してた木下さん、だっけ? どうなったのよ」
「木下君? 実はこの前一緒にご飯食べに行ったんだけど――」
酒の力もあり、女同士の話は絶える事なく進む。話題は上手く美穂の恋愛にすり替わり、千恵が頭を悩ませる話題には至らなかった。
そして深夜。美穂は酔いつぶれた千恵を引きずって、千恵のベッドまで運んでいた。
「ったく、弱いのに飲み過ぎだっての」
女一人の力で大人を運ぶのは重労働である。愚痴をこぼしながらベッドに千恵を投げ出した。
ベッドの隣には、客用の布団が置かれている。それに寝ろという事なのだろうと思い、美穂はそれを広げた。
「……?」
そこで美穂は、部屋に妙な違和感を覚える。辺りを見回せば、その違和感の正体はすぐに分かった。