真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第5章 拙者は常にその人を兄上と呼んでいた。
「チャオー! 待ってた、あたしの救世主!」
真紀は幸村に抱きつくと両頬に何度もキスする。美穂が呆然としていると、真紀は千恵にも同じように熱烈なキスを交わした。
「こちらは初めましてだね。へぇー、すごくべっぴんさん、幸村の彼女?」
「い、いえ、こちらは千恵殿のご親友である葛西美穂殿でござる。ぜひこの店を紹介したいと思い、共に来ていただいたのだが……」
「さっそくお客様まで連れてきてくれるなんて、熱心なんだから! よし、じゃあさっそく入って! 最強においしいタコス出すからさ」
真紀は固まる美穂をものともせず、幸村を引っ張っていく。しばらく美穂は放心していたが、千恵が声を掛けるとようやく正気を取り戻した。
「ちょ、なんなのよあの女! 千恵、あんた男だけじゃなくて、変な女にも騙されてない!?」
「大丈夫だよ……多分」
今日も受けたキスに千恵自身も目を丸くしつつ、苦笑いで返す。だが美穂は目をつり上げ、頭をかき乱しながら喚いた。
「だって、あの女、キスしたんだよ! 千恵、幸村取られちゃったらどうするの!」