真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第5章 拙者は常にその人を兄上と呼んでいた。
真紀の明るさは、どこか美穂に通じるものがある。美穂は真紀の奔放な態度に疑念を抱いていたが、何かきっかけがあれば仲良くなれそうな気がした。
「じゃあ……幸村を家まで送ったら、一緒に行こうかな」
「そうね、邪魔な男は排除して、女同士仲良くやりましょ!」
千恵が笑みを取り戻すと、真紀は手を繋いだまま歩き出す。今の時点で、問題は何も解決していない。しかし気にかけてくれる優しい人達の温もりは、千恵を潰さず守っていた。
戻ってきた千恵と真紀がやけに意気投合している事に疑問を抱きつつ、幸村は千恵の家、そしてクローゼットから戦国の世へと帰る。が、幸村を待ち受けていたのは、渋い顔をした昌幸だった。
「人を差し置いて、随分楽しんできたようだな」
「父上、何かこちらで不都合でもありましたか? 眉間に皺が寄っていますぞ」
「全く、呑気なものだ。果たしてこれを読んでも、その顔のままでいられるかな」
昌幸が差し出したのは、一通の手紙。幸村は首を傾げ、それに目を通す。そして読み進めるたびに、浮かれていた表情に陰りを見せた。