真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第6章 拙者はその人の記憶を呼び起すごとに、すぐ兄上といいたくなる。
しかし国親が千恵の下半身に手を伸ばした瞬間、乱暴にドアを開く音と同時に、リビングの電気が点く。
「お前は誰だ、私の千恵に何をしている」
千恵の寝室から現れたのは、昌幸だった。国親は反射的に千恵から身を離すと、昌幸を睨み付ける。
「あんたこそ誰だよ、俺は千恵の婚約者だぞ」
「婚約者? そうか、昨今の若者は、花嫁の父親に対してそのような無礼な口を聞くのか」
「父親……っ!?」
言われてみれば、昌幸は千恵より大分年上である。千恵の服を整え、拘束を解くと頭を下げた。
「――申し訳ありません。僕は本村国親、千恵さんとお付き合いさせていただいてます」
「口を塞ぎ縛り上げて泣かせる付き合いとは、どんな付き合いなんだ? 私の知る婚約とは、随分勝手が違うようだが」
「それは……」
「言い訳など無用だ! 貴様が何者であろうと、千恵を泣かせるなら近付く資格などない!」
昌幸は玄関を指差すと、心臓を凍らせるほど冷えた声を上げ国親を睨み付ける。
「今すぐ消え去れ。私の目の黒い内に千恵へ近づけば、一族郎党皆撫で斬りにしてくれる」