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「まあいい。あの時はお前に警戒をされないように女装していただけで、俺は男に間違いない。徳川は鳥居元忠様に仕える、忍びの一人だ」

「私と共にいた時雨さん――あの方は無事なのですか」

「ああ、あの甲賀忍者か？　追ってきたから応戦したが、止めは刺せなかった。残念ながら、生きているだろう」

「甲賀……忍者？」

　彼女――いえ、彼は当たり前のように言いました。が、私にとってその肩書きは未知なるものでした。するとお志乃さんは呆れた目を私に向けました。

「まさか、知らないで護衛に付けてたのか？　どこからどう見ても、いけ好かない甲賀の忍びだったろ」

「そんな!?　だって時雨さんは偶然出会った、薬売りの方で……」

「薬売りって、じゃあやっぱり忍びだ。甲賀の者は、素性を隠す時大抵薬売りに化けるからな」

「そ、そうなんですか？」

　頷いた彼を見て、私は正月に抱いた疑いを思い出しました。時雨さんが忍びであるのならば、無意味に私へ近付いたはずがありません。私の知らない所で、何かが動いているのは間違いないようでした。

「知らないで忍びがついていた……か。なるほど、真田昌幸は相当な過保護なんだな」