たゆたう草舟
第2章 余計なお世話
そのような心持ちでいたので、続けて出た言葉には驚くばかりでした。
「どうだ、お葉。信明殿と夫婦になってみては」
「――はい?」
「そうか、二つ返事とはさすが決断が早い! いや実はな、信明殿が以前、櫻井家を再興させたいと話していたのだ。二人が夫婦となり子どもを山ほどこさえれば、その子に櫻井家の名を与えてもよいのではないかと思ってな」
「お、お待ちください! 今のは返事ではなく、あまりに突然だったため聞き返してしまっただけで!」
「なんだそうなのか。だからな、信明殿と結婚したらどうかと言っているんだ」
信繁様は正直にそのまま言い直しますが、私は眩暈がして倒れてしまいそうでした。櫻井とは、かつての私の姓。今はもう断絶した、私の家です。ようするにその信明様と結婚し、山田家の跡継ぎの他に子が出来れば、櫻井家を再興させるという話なのでしょう。
しかし、話をするにももう少し機というものがあるでしょう。おそらく思い付いたその時の勢いで私に声を掛けたのでしょうが、もう少し改まって話をしてほしかったと思ってしまいました。