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たゆたう草舟

第4章 落葉の風

 
「いえ、本当に大丈夫ですって!」

「でも、風邪でも引いたら申し訳ないです。家はわたしの一人暮らしですから……ね」

 結局私は年下の少女に押し切られ、彼女の家に向かう事となりました。

 彼女の家は町の外れにあり、小屋のように小さいものでした。一人暮らしと言っていましたが、何か訳ありなのかもしれません。が、そのような事を初対面で聞くのは野暮でしょう。

「私、葉と申します。あなたは……?」

 着物を干している間、何も着ないでいる訳にはいかないので、私は彼女の着物を借りました。少し小さいそれを身につけ、火のついていない囲炉裏に対面した彼女に、私はひとまず名前を訊ねてみました。

「わたしは、志乃と申します」

「お志乃さんですか。そういえば水は大丈夫ですか? どこかへ運ばなければならなかったのでは?」

「いえ、あなたを放って行く訳には参りませんから。こんなあばら屋でごめんなさいね。今日は風もありますし、すぐに着物も乾くと思いますが……」

「いえ、お気になさらず。充分すぎるくらいです」

 私はそう答えましたが、体に違和感を覚えていました。寒気が走るのに、なぜか熱さが体にこもるのです。
 

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