たゆたう草舟
第4章 落葉の風
しかし、妙です。いくら水を被ったからといって、数刻も経たないうちに症状が出るはずがありません。体調を崩す理由が、私自身分かりませんでした。
「……お葉さん?」
時が経つにつれ明らかに悪くなる具合に、お志乃さんも眉をひそめます。が、彼女に気付かれる頃、私はすでにごまかし取り繕う余裕すらありませんでした。
助けてくれと叫ぶように、内側からどんどんと響く鼓動。額から流れる汗。眩暈がして、私は座っていられずうつ伏せてしまいました。
「お葉さん!?」
肩を揺さぶられ、声を掛けられますが、私は答える力もありませんでした。そしてとうとう、意識を手放してしまったのです。
額に冷たいものが当たった感触で、私は目を覚ましました。まだ体は寒く、頭も痛いのですが、意識を保てるくらいまでには回復したようです。
「お志乃さん……」
私は起き上がろうとして、気が付きました。ここは、先ほどまでいたお志乃さんの家ではありません。しっかりとした作りのお屋敷でした。
そして私の横に座っていたのは、見知らぬ女性。やはりお志乃さんではなく、私より少し年上に見える穏やかな女性でした。