たゆたう草舟
第4章 落葉の風
「良かった、気が付いたのね」
「あなたは……?」
彼女はにこりと笑うと、部屋の外に向かい呼び掛けます。
「あなた、お葉さんが起きましたよ」
すると、どたどたと足音が響き、部屋の襖が荒く開かれました。
「お葉殿! ああ、良かった」
「信明様!」
一体どういう事なのでしょう。町外れのお志乃さんの元にいたはずなのに、顔を出したのはかつて私がご迷惑をおかけした、信明様でした。彼は女性の隣に膝をつくと、目を丸くしたままの私に事の真相を教えてくださいました。
「実は、私用で町に出掛けたら、お葉殿を抱え医者を求める少女を見かけたのです。どうした事かと声を掛ければ、突然倒れたと聞いて……医者ではないが、拙者が身柄を引き取ったのです」
「倒れた……?」
「もちろん医者も呼びましたから、来たら見てもらいましょう。今は、少しでも気を楽にしてください」
そして隣の女性が私にお辞儀し、その正体を明かしました。
「私は山田信明の妻、浩美です。どうぞよしなに」
「妻……徳川の、お嫁さん?」
「どうですお葉殿、拙者の妻は美しいでしょう? ずっとお葉殿の看病もしていたのです、心も美しい」