たゆたう草舟
第4章 落葉の風
中へ入ると、敷いてあった布団に寝かされました。しかし何の関係もない信繁様の寝所で休む理由がありません。私が身を起こそうとすると、昌幸様は肩を押さえ意地悪な笑みを浮かべました。
「お前が寝るまでは離さんぞ。私を早く仕事に戻らせたいなら、観念して眠る事だな」
「そんな事を言われましても、なぜ信繁様の部屋なのですか! 何がどうなっているのか、少しも理解できません!」
理解出来たとしても、他人の部屋で休むのは不躾です。私は早く起きて自分の家に戻りたかったのですが、昌幸様を出し抜く術も思い付きません。
「もう、文句は終わりか?」
「……終わりです」
「よし、それなら大人しく寝ていろ」
結局私は信繁様の部屋でそのまま休む事になります。いつだってそうです、私が何を言おうと、昌幸様を止める事は出来ないのです。
「昌幸様……」
私が諦めると、昌幸様は枕元に座ります。私はそんな彼を見上げ、思うままを伝えました。
「きっとこの荒唐無稽な行動にも、意味があるのでしょう。私には全く理解出来ませんが……信じます」