たゆたう草舟
第4章 落葉の風
帯を抜き取られ、また昌幸様も着物を寛げると、口付けは深くなりました。同時に胸へと手を伸ばされ、私は身じろいでしまいます。
「……嫌か?」
そういう事を聞くのは、反則です。嫌というか、駄目に決まっています。ここは仮にも信繁様の部屋、さすがに布団は別の物でしょうが、信繁様のお気持ちを考えれば止めるべきです。
「嫌では……ないです。昌幸様のなさる事ですから」
しかし私の口は理性と逆の事を言って、昌幸様を布団の中に引き入れます。ここで私が拒めば、きっと昌幸様は悲しみに捕らわれ、小さな草舟のままになってしまうのでしょう。私はどんな理屈よりも、それが一番心苦しかったのです。
私が彼の背に腕を回せば、彼は堰を切ったように激しく私を抱きました。私の体は秘め事にも慣れていませんし、何より今は病身です。与えられる愛撫は苦しさも伴いましたが、私は氾濫する川に溺れながらも流れました。いえ、流れているのではなく、沈んでいるのかもしれません。
息も満足につけなくて、心臓は今にも破裂しそうで、頭の中は真っ白で――なのに私は彼自身が中へ侵入したその時、笑いました。ご自分を責めてばかりの昌幸様が、お優しい表情に戻っていたからです。