たゆたう草舟
第4章 落葉の風
「……すまない」
やはり私には、昌幸様のお考えが分かりません。謝る必要などないのだと口にしたかったのですが、意識が遠のきそれを言えたかどうか、私は分かりませんでした。
私が再び意識を取り戻したのは、襖を開ける音が聞こえた時でした。昌幸様はいつの間にか姿を消していて、部屋には私一人でした。そこへ、信繁様が戻ってきたのです。
「おおおお、お葉!? なんで、こんな所に」
信繁様は何も聞かされていなかったようで、私の姿を見つけるとうろたえます。そして慌てて出て行こうとしたのですが、それは敵いませんでした。
両手一杯に引いても、びくともしない襖。どうやら、私達は閉じこめられてしまったようです。
「お葉、夜這いは良くない! 俺が避けたのは悪かったが、はしたない真似は――」
「私が夜這いしたのではありません。落ち着いてください、信繁様」
私はそう諭し体を起こしますが、その時気付きます。私は何故か浴衣一枚しか羽織っていなかったのです。
「な……なんで!?」
これでは、信繁様に誤解されても文句を言えません。私は布団にくるまりながら体を起こしますが、信繁様は目を合わせようとしませんでした。