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たゆたう草舟

第5章 月草の 消ぬべくも我は 迎え往く

 
「……承知しております。ご迷惑を掛けた罪、私の首で贖います」

「その潔さ、良し。お前の気持ちはよく分かった」

 ですがこれに反したのは、信明様でした。彼は血の流れる顔を上げると、涙を流し懇願しました。

「お待ちください!! お葉に何の罪があるのですか! 彼女を愛したのも、内通したのも拙者です、彼女は関係ない!!」

「そう思うなら、なぜ内通の見返りにお葉を求めた。謀反に成功しようが失敗しようが、城からお前とお葉が消えれば、皆思うだろう。この謀反はお葉のために起こったのだと。お前がお葉に執着しているのは、明らかだからな」

「――好いた女を連れて行って、なにが悪いのです!」

「好いた女に汚名を被せて、平気でいられる男に語る説教などない!! お前の浅慮のせいで、私はお葉まで罰せなければならないのだ!!」

 昌幸様は声を荒げ、床に拳を叩きつけました。その気迫に信明様が怯むと、昌幸様は部屋の外で待機する近習へと命じました。

「今すぐ連れていけ、二度と無駄口を叩けぬよう、首をはねろ!!」

 近習達が暴れる信明様を数人がかりで連れて行き、場は静まり返ります。私はただ、放心しながらそれを見つめるしか出来ませんでした。
 

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