たゆたう草舟
第5章 月草の 消ぬべくも我は 迎え往く
「何故だろうな、お前を前にすると、つい弱音が出る。寄りかかるには、幼い苗木だというのに」
「私は、もう子どもではありません!」
昌幸様から比べれば、まだ未熟かもしれません。しかし私は大きくなり、気持ちを汲む事が出来るようになりました。訳も分からずに、慰めたいと思っていた頃と違って。
「昌幸様は尊大に見えて、自己卑下が過ぎます。他の誰がどんな道を選ぼうと、昌幸様が進む道に間違いはありません。もう少し、自分を労ってください」
「労る……か。自分を労るとは、どうすれば良いのだ? 私は人に報賞を与えても、生まれてこの方自分に何かしてやった記憶はない」
そう問われると、私も一瞬言葉に詰まります。そして頭に浮かんだ方法の稚拙さに情けなくなりながらも、答えるしかありませんでした。
「例えば、自分で自分を褒める……とか」
「残念だが、自己卑下の過ぎた人間に、褒める言葉は思い付かないな。お葉、お前なら私をどう褒める?」
「それは……その、家族想いでお優しいとか、敵を翻弄する聡さが素敵とか、もちろんお顔だって他の男性と比べれば端正で、大人のように見えて子供じみた笑みも可愛らしいといいますか……」