テキストサイズ

たゆたう草舟

第5章 月草の 消ぬべくも我は 迎え往く

 
 舌を絡ませ深い口づけをするまでは良かったのですが、この先どうしたらいいのかが私には分かりませんでした。考えてみれば私はいつも翻弄されるままで、そもそもどうすれば男性が喜ぶのか、知識がありませんでした。当然、昌幸様以外の方に触れた事などありませんので、経験などもってのほかです。

 私の動きが止まると、身を任せていた昌幸様が笑い出します。未熟な私を小馬鹿にしているに違いありません。

「な、笑わないでください! こちらは真剣に、どうしようかと思って……」

「いや、すまない。しかし、ここで主導されても困ると思ってな。手慣れているようであれば、どこで覚えたかと問い詰めねばならん」

「手慣れている方が、男性は嬉しいのでは? 私のように手間の掛かる女では、興が削がれるでしょう」

「遊び女ならな。しかし、お前は違うだろう」

「え……?」

 一時の遊興でなければ、一体なぜ私に手を差し伸べるのでしょうか。それではまるで、本当に愛されているようです。

 しかし心に浮かんだ疑問は、昌幸様が私の着物を乱した事で吹き飛んでしまいます。
 

ストーリーメニュー

TOPTOPへ