たゆたう草舟
第5章 月草の 消ぬべくも我は 迎え往く
裾から差し込まれる手は、夜の冷えのせいか少し冷たくて、無意識に仰け反ってしまいます。すると目に入るのは、闇に浮かぶ弓張り月でした。
「綺麗……」
「綺麗とは、私がか?」
「え? あ、いえ、月が……」
私が正直に答えれば、昌幸様は眉間に皺を寄せます。
「私が目の前にいながら、余裕だな。それならば、まだまだ激しくしても平気か」
「あの、いえ、昌幸様も綺麗です――んんっ!」
慌てて取り繕おうとしますが、拗ねた昌幸様は私の胸にかぶりつき、先端を吸い上げます。強い刺激に目を閉じてしまえば、弓張り月はもう見えなくなってしまいました。
ねぶる舌と指に私は立てなくなりそうで、後ろの木に寄りかかりました。すると昌幸様は私のだらしなくぶら下がる手を取ると、自身の中央へと誘導したのです。
「こちらの月も負けじと張っているが、愛でてみるか?」
固く反り勃つそれは、月というより夏の太陽のように漲り、触れているだけで熱くなってしまいます。私がためらっていると、昌幸様は私の手を離し溜め息を吐きました。
「そうか、お前はあちらの月の方が立派だと思うか。ならば仕方ない。あちらに存分愛されるといい」