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たゆたう草舟

第6章 甲賀の時雨

 






 時雨さんとの旅路は、とにかく寄り道が多いものでした。私には御守りを売ろうとしていましたが、どうやら本職は薬売りだったようで、良さげな山を見ると、薬草を取りたいと入ってしまうのです。

 私も薬草取りを手伝う事となり、甲賀に入る頃には、目利きと山の心得をすっかり手に入れていました。この日も私達は山で薬草を取った後、野宿の準備を済ませたのです。

 揺らめく炎の赤にまで、真田を見出してしまう自分を自嘲しながら、私は薪を見つめていました。今日の夜空は、何度目かの弓張り月。感傷に浸りやすい気分だったのかもしれません。

「お葉ちゃん、疲れたかい?」

「あ、いえ。なんだか故郷を思い出しちゃって。もう帰る事は出来ないのですが、信濃はとても良い場所でした」

「……お葉ちゃん、ちょっと、突っ込んだ話をしてもいいかい?」

 すると、薪を挟んで向こう側に座る時雨さんは、神妙な顔をして私に言いました。

「もし、身籠もっているなら……ちゃんと話すんだよ。無理して山を騒がせて、お腹の子が流れたらまずいだろう」

「……はい?」
 

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