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スキをちょうだい。

第2章 こうかい


「た、たまき、もぅっ、イぃ」

「だしていいよ」

 環が言い終わった直後、彼の手になま温かい液体が溢れた。

 航太は乱れた呼吸を整えつつ、壁を伝って振り返る。

 自分で立っているのがやっとの状態だった。

「いっぱいでたね」

 環は、手のひらを染める白い液体を満足そうに眺めている。

「汚いから」

 航太は元に戻ったモノをしまい、ポケットからティッシュを取り出そうとするーーと、前方から濡れた音がして、顔をあげた。

 環が手のひらの液体を舐めていた。

 指の先や隙間まで、あますことなく舐めている。

「ん…‥、おいしい」

「お」

 目の前で展開される仕草に、一瞬、再び理性がぐらつくが、すぐに気を取り直して、環にティッシュを突きつける。

「おいしいわけないだろ! 拭け! 洗え!」

「えー」

 不満の声をあげる環を、廊下の手洗い場へと追い立てる航太なのであった。




 騒ぐ二人を見つめる人影が一つ。
 影は怪しげに笑い、去っていった。

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