
スキをちょうだい。
第1章 ひみつ
航太は、鏡を見ながら、首筋につけられたキズに絆創膏を貼った。
そして、それが隠れるようにワイシャツを着る。
少し、シートの茶色が見えていることを気にしたが、大丈夫だろうと首を振り、ブレザーを羽織った。
「あんた、まだニキビ治んないの?」
突然、背後からかけられた母親の声に、飛び跳ねて驚く。
予想以上の反応に、母親も目を丸くする。
「何、飛び跳ねてんの」
「そっちが悪いんだろ! あっち行け」
航太の言いぐさに、母親はぶつぶつ小言を言いながら洗面所を出て行った。
その後ろ姿がリビングまで行くのを見送り、安堵の息を吐く。
絆創膏の下にあるものの正体を、彼は母親に隠していた。
正体を言うこと。それはつまり、秘密を包み隠さずに伝えるということだ。
ーこれはどうにもごまかせないもんな…‥。
航太は、シャツの襟からはみ出している絆創膏の端っこを、指でなぞった。
